秋の高校野球の頂点を争う試合のなかで、心温まるシーンがあった。11日にあった明治神宮野球大会準々決勝、高松商(四国・香川)―八戸学院光星(東北・青森)。七回の出来事だった。
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高松商の右腕、中塚公晴(2年)が救援に向かう。マウンドで投球練習を始めると、一塁側の味方スタンドから「ハッピーバースデートゥーユー」の歌声が流れてきた。この日は、17歳の誕生日。仲間からの突然のプレゼントを背中に受け、試合の再開を待った。
これで終わりではなかった。球審がプレーボールを告げる。すると、今度は三塁側のスタンドから同じ曲が流れてきた。相手の八戸学院光星応援団からのサプライズ。「びっくりしました。相手からっていうのは、新鮮でした」と中塚。うれしさを胸にしまい、気持ちを切り替えて打者に向かった。互いのスタンドはメガホンを振り合って、盛り上がった。
実は有名なプロ野球選手を大叔父に持つ中塚。中塚政幸さん(73)は、大阪・PL学園高、中大を経てプロ野球大洋(現DeNA)に入団。1974年には盗塁王(28盗塁)のタイトルを獲得して、通算1440安打を記録した左の好打者だ。
幼いころは打撃の指導を受けたことがあるという中塚だが、「小さい頃からアニメの『MAJOR』を見ていてピッチャーの主人公がかっこよかった」と、投手を選んだ。
この日は救援で3イニングを投げて2点を失いながらも、リードを守り抜いた。9―6で勝利。九回には光星の4番近藤遼一(2年)にソロ本塁打を浴びたが「相手の4番との勝負を楽しむことができた。そういう野球ができてよかった」。神宮球場で迎えた17度目の誕生日を、目いっぱい楽しんだ。(小俣勇貴)