指導者や保護者は口出しせず、黙っていよう――そんな少年サッカー大会が、愛知県で定期的に開かれている。その名もサイレントカップ。子どもたちの主体性を高め、問題解決能力やコミュニケーション能力を養おうという試みだ。 10月21日、愛知県東浦町の多目的広場に、西三河地区の地域クラブを中心とする小学5年の8チームが集った。 ハーフタイム。「疲れてできない人はいる?」と、キャプテンが交代希望を聞いているチームもあれば、「もっとサイドを使おうよ」と修正点を言い合っているチームもあった。 サイレントカップを主催するのは、刈谷市のワイヴァンFC。クラブダイレクターの今久保隆博さんは、始めたきっかけを「どの試合も監督やコーチが子どもたちを先導し、多くの指示が飛び交う。ミスを指摘され、ベンチに下げられた子どもが叱責(しっせき)を受ける。そんな様子に疑問を感じた」と振り返る。「子どもはこの年代からアクティブに取り組むことでこそ、サッカー以外の部分を含めて将来の適応能力がつく。そして、指導者には普段の練習のあり方を見つめる機会にしてほしい」と話す。 ピッチ脇に大人は入れず ピッチ脇に大人は入れない。ハーフタイムのミーティングや選手交代はもちろん、試合前のウォーミングアップや先発メンバーの決定、作戦など、試合に関わるすべてを子どもたちに預ける。そして、試合に全員が出るのがルールだ。昨年11月に1回目を行い、今回が13回目だった。 名古屋市の守山FCは初参加。子どもたちに感想を聞くと、「味方に何をアドバイスしていいか、わからない」と戸惑いの声が出た。一方、メンバーの決め方は「試合に出る時間を平等にしている」という。 見崎渉コーチは「いつも作戦を授けてしまい、プレーを限定させているかも。もっと任せていいと思った」と話した。岡崎市の細川少年サッカークラブの高野克美監督は「もどかしい」と本音を明かしつつ、普段と違うフォーメーションを選択しているのを見て「固定観念にとらわれていない」と感心した。 試合では、一つの傾向が出る。相手のカウンターを受けての失点が多くなるのだ。指導者の指示がないと、スペースを突かれる場面が増える。かつてJ1名古屋で主に育成を担当していた今久保さんは、「守備意識が低いというより、得点をしたいという本能的な欲求の表れ」とみている。 大人が黙るサッカーは、子どもたちの主体性だけでなく、得点に結びつくプレーをめざす積極性も育む。(編集委員・中小路徹) |
指導者も保護者も口出しなし 少年サッカー大会の試みは
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