離婚した後も、「親」であり続けたい――。離婚した父母の一方のみを子どもの親権者とする「単独親権制度」をとる日本で、父母双方が親権をもつ「共同親権制度」の導入をめぐる議論が続いている。東京都内の40代男性は10月、妻と親権を争う離婚訴訟で共同親権を求め、最高裁に上告した。「一方の親から親権を奪うのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反する」とする異例の主張だ。
「パパーっ」
別居中の妻に付き添われて待ち合わせ場所の駅に現れた小学生と保育園児の息子たちが、男性の姿を見つけて抱きついてくる。月に2回だけ認められた7時間の面会と、年3回の宿泊。男性が一緒に過ごせる時間はわずかだ。
公園で野球や虫捕りをして、上の子が大好きなラーメンを一緒に食べる。ありふれているはずの親子のふれあい。だが、別れの時が近づくと、子どもたちは抱っこをせがんだり、泣き出したり。迎えの妻と去る後ろ姿が、胸を締め付ける。
妻が子どもを連れて別居を始めたのは2015年2月。結婚から7年たち、家事や育児の分担をめぐって口論になることが増えていた。溝は埋まらず、離婚に同意した。だが、親権は譲れなかった。
家裁の調停から訴訟へ。東京家裁は今春、子どもと同居する母親を親権者とする判決を言い渡した。親権がないと、子どもの教育や財産の管理などに関われない。「子から一方の親を奪う単独親権制度は人権侵害で、憲法違反だ」。今年4月に控訴した東京高裁からそう主張した。
高裁判決は「単純に共同親権ではないという理由で違憲とはいえない」などとして控訴を棄却した。離婚訴訟で最高裁まで争うのはまれだが、親権が得られれば妻と対等の立場で子どもに会えるはずだ。男性は迷わず上告した。
男性の代理人を務める作花知志(さっかともし)弁護士(岡山弁護士会)は、離婚した女性の再婚を6カ月間禁じた民法の規定について最高裁で違憲判決を得るなど、家族法をめぐる訴訟を多く手がける。作花弁護士によると、最高裁はこれまで単独親権制度の違憲性について判断を示したことはないといい、「離婚で親子が断絶することを憲法が容認しているはずがない。最高裁は率先して人権救済機関としての役割を果たすべきだ」と話している。
■父親の育児参加、共同親権求め…