南海トラフ地震が発生する恐れが高まったとして「臨時情報」が出された際、住民や自治体、企業が取るべき対応や課題について、政府の中央防災会議は11日、報告書の最終案を提示した。三つの異常現象を対象に検討し、想定震源域でマグニチュード(M)8級の地震が起きて臨時情報が出た場合、一部地域はその後のM9級の巨大地震に備え、全住民が1週間程度、避難するとした。
最大32万人の死者が想定される南海トラフ地震は今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされる。突然巨大地震に襲われる恐れもあるが、前兆の可能性がある異常現象が確認される場合もあり、気象庁は有識者らによる調査開始やその結果を臨時情報として発表する。
臨時情報につながる異常な現象は、想定震源域の半分でM8級の巨大地震が起きる「半割れ」、震源域の一部でM7級の地震が起きる「一部割れ」、プレート境界が揺れを伴わずに動く「ゆっくりすべり」の3パターン。
このうち「半割れ」ケースで、後発の巨大地震による津波到達までに避難が完了できない地域の全住民と、それ以外の地域でも避難が完了できない可能性がある高齢者らは1週間程度、事前に避難するとした。具体的な対象者は市町村があらかじめ決める。避難先は知人宅など個別に確保することを基本とした。
「一部割れ」「ゆっくりすべり」での臨時情報発表時は、その後の巨大地震の発生確率などから、政府が地震への備えを呼び掛ける程度にとどめる。「半割れ」ケースでの事前避難のほかは、住民や企業がそれぞれの状況に応じて行動することを基本とした。
政府は昨年、東海地震の予知を前提とした大規模地震対策特別措置法を約40年ぶりに見直した。首相が警戒宣言を出して鉄道を運休させたり学校を休校させたりする防災対応をやめ、南海トラフ地震に関する臨時情報の仕組みを導入した。
今後、報告書案をもとに政府がガイドラインを作成し、都府県や市町村、病院、鉄道事業者などが個別の防災計画を策定する。(山岸玲)