国内製薬最大手の武田薬品工業は28日、創業の地・大阪市の本社ビル(武田御堂筋ビル)など、全国の21の資産を売却すると発表した。売却額や相手先は非公開だが、税引き前の売却益は総額約380億円。アイルランドの製薬大手シャイアーの巨額買収で膨らんだ負債を削減する。
武田は2019年3月期の業績予想で、不動産売却益として800億円を織り込んでおり、今回の資産売却はこの一環。武田と子会社の武田薬品不動産は、新たに設立する子会社に不動産の一部を譲渡し、全株式を取得。その全株式を3月22日付で売却する方針だ。
大阪本社ビルは売却後に賃貸に切り替え、武田の従業員が引き続き使う。登記上の本店所在地を大阪から移す考えはないという。
一方、武田は昨年、東京都中央区に「武田グローバル本社」を約660億円で完成させた。この本社ビルは保有し続ける方針で、実質的には「大阪離れ」が進むことになる。
シャイアーの買収総額は、日本企業の買収としては過去最高の約460億ポンド(約6・2兆円)。武田にとっては18年3月期末時点の約8倍にあたる純有利子負債約5・4兆円の削減が急務だ。
シャイアーは血友病など患者数は少ないが利益率は高い「希少疾患」の治療薬に強みがあり、武田は買収によって収益力の強化を図る。さらに、最大100億ドル(約1・1兆円)の非中核資産を売却することで、負債の削減を加速させる考えだ。(箱谷真司)