毎年、暑くなると増えるエアコンの訪問修理。難しいのは何が壊れたのかが分からないなか、交換部品を間違わずに持って行くことだという。最大手のダイキン工業は部品を選ぶ作業を人工知能(AI)に任せ、作業効率の大幅アップに取り組んでいる。同社によると、修理サービスの現場でAIを本格活用する例は全国的にも珍しいという。
大阪市中央区の同社のコールセンター。夏が近づくと家庭用、業務用を問わず、「冷えない」「におう」といった修理依頼の電話がひっきりなしにかかってくる。これを受け、各地のサービス拠点が必要な交換部品を手配し、修理担当者を出動させる。
ただ、1台のエアコンには平均約2千点の部品が組み込まれ、実際にどれが壊れたのかを事前に特定するのは難しい。経験を頼りに持って行くものの、現場で部品が足りないことに気づくケースも多い。訪問先ごとに機種も違い、すべての交換部品を持ち運ぶのも非現実的だ。
実際、ダイキンが昨夏受けた部品が必要な修理のうち、1回の訪問で直せたのは53%。この「ミス」を減らすため、同社は東京のベンチャー企業「ABEJA」のAI技術を導入。10年分の修理データをAIに学ばせ、昨夏に受けた修理依頼をこなす実験をしたところ、64%の割合で正しく選定できた。
学習を進めればさらなる精度の向上も見込め、ダイキンは今月から選定作業をすべてAIに任せることにした。不要な部品を倉庫に戻す費用は1点あたり約700円かかるといい、ミスが減らせれば作業の効率化に加えてコストの削減も見込める。
将来は、修理担当者のスキルに応じた仕事の割り振りまでAIに任せる方針という。山本仁史・サービス本部企画部長は「AIの活用が叫ばれている一方で、どう使えばいいかノウハウを持っている製造業の現場は少ない。部品の選定や技術者のスキルをAIが学ぶ例はまだ珍しく、今後も業界をリードしていきたい」と意気込む。(福山亜希)