沖縄県民が米軍普天間飛行場移設による辺野古埋め立てに「ノー」を突きつけて一夜明けた25日、安倍晋三首相は工事を止めることもなく、移設の必要性をひたすら繰り返した。自ら約束した「普天間の5年以内の運用停止」も空手形に。工事の長期化は必至で、民意を軽んじられ続ける県民の政権への不信は募るばかりだ。
安倍首相「先送りできない」 辺野古移設進める考え示す
辺野古埋め立て「反対」多数が確実に 沖縄県民投票
25日朝、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブのゲート前。有効投票数の72・15%が反対票を投じた県民投票を受けて、市民ら約40人が座り込んだ。「県民投票の結果で大きなうねりをつくろう」と拳を突き上げたが、県警の機動隊に抱えられ排除された。資材を積んだダンプカーやミキサー車が続々と到着し、沿岸部にはこの日も土砂が投入された。
安倍晋三首相は衆院予算委員会で「県民投票の結果を真摯(しんし)に受け止める」と神妙な面持ちではあったが、続けた言葉は普天間飛行場の移設の必要性ばかり。「危険なまま置き去りにされることは絶対に避けなければならない。地元の皆様との共通認識である」。埋め立て工事の中断や見直しには一切触れず、沖縄の民意を無視し、工事を続行する姿勢は変えなかった。
政府は県民投票を当初から「意味がない」と軽視していた。自民、公明両党は告示後も賛成を訴えるわけでもなく、投票率が下がることを期待していたのが実態だ。その影響もあって投票率は昨年の知事選より下がったが、反対票は玉城デニー知事の票数を超え、自公支持層も反対票を投じたのは間違いない。投票率52・48%は、2017年衆院選全体の投票率と1・2ポイントしか違わず、不参加で投票の政治的効果を減じようとした与党の思惑は外れた。
それでも政府が無視するのは、日米両政府の合意を変えたくないという判断がある。首相は「普天間の全面返還については、日米で合意をしてから既に20年を超えて、今もなお返還が実現しておらず、もはや先送りは許されない」と答弁した。ハガティ米国駐日大使も朝日新聞のインタビューに「現行案を追求し続けること以外、実行可能な選択肢はないと思っている」と語っている。
首相は3月1日にも玉城氏と面会するが、これまで通り政府方針を一方的に伝達することになりそうだ。首相官邸幹部は「民主党政権でも結局辺野古になった。辺野古しかない。県も反対だけで代替策なんて何の提案もしていないでしょう。辺野古になれば基地の面積は今の半分になる」とさえ語る。
移設の是非が争点となった2度の知事選に続き、埋め立ての是非を問うた県民投票の民意さえも無視されることに、沖縄県側は収まらない。玉城氏は25日の県議会で「辺野古埋め立てを決して認めないという断固たる民意を真っ正面から受け止め、辺野古が唯一という方針を見直すべきだ」と政府に迫る考えを示した。県幹部は首相の「真摯に受け止める」との言葉について、「また口ばかりだ。本土の国民向けに丁寧な言葉ばかり並べるが、実際に沖縄でやっていることは誠実さのかけらもない。沖縄県民を馬鹿にしている」と語った。(宮野拓也、岡村夏樹)
■「普天間運用停止」不履行の責…