ふるさとは原発事故で帰還困難区域になった。祖母を亡くしたつらい記憶もよみがえる。そんな妻の、支えになったのは夫だった。妻が生まれ育った福島県双葉町の職員に転職し、長引く避難生活で綻(ほころ)んでいく町と妻との間を、新たな糸になって結ぼうと決めた。 特集:3.11 震災・復興 「双葉に帰してくれ」 保育士の白石茉希子(まきこ)さん(27)は毎年3月になると祖母の叫び声を思い出す。 小学校からの帰り道、毎日のように自宅の隣に住む祖母に会いに行った。笑顔でコタツに座る祖母を見ながら、「柿の種」やミカンを食べた。家の前に100本以上のブルーベリー畑が広がっていた。 震災の時はバレーボールに打ち込む福島大の学生だった。母と姉と3人で単身赴任だった父を頼って千葉県柏市に逃げ、祖母は親戚と埼玉県加須(かぞ)市の廃校していた高校に避難した。 「おらを捨てに来たのか。双葉に帰してくれ」 軽い認知症だった祖母は地震前後の記憶が抜け落ち、高校の柔道場で大きな声で叫んだ。「ばあちゃん、地震があったんだよ」。茉希子さんは毎週のように加須市に通って、抱きかかえるようにして言い聞かせた。しかし、1カ月後に亡くなった。90歳だった。 年月が経っても、茉希子さんは下宿先のアパートで時々、「ばあちゃんにもっとしてあげられることはなかったのかなあ」と泣いていた。バレー部の二つ下の後輩に電話をして、悩みを打ち明けた。ただ静かに話を聞いてくれた。 その後輩、白石亮佑(りょうすけ)さん(25)は秋田県出身。茉希子さんの卒業後、自然な流れで交際が始まった。亮佑さんも2016年に大学を卒業し、福島市の一般社団法人に就職。翌年の元日に2人は結婚した。 「私の生まれ育った家を見てほ… |
防護服で妻の実家へ、そして決意 「俺、双葉町受ける」
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