「久しぶりだね。おっきくなったね」。開幕試合に登場した星稜(石川)の主将、竹谷理央君(3年)は試合開始前、始球式を務めるOBの松井秀喜さん(44)に甲子園球場内でばったり会った。「僕の始球式じゃなくて、しっかり試合に集中して」と言われ、「ありがとうございます」と返した。
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10年ぶりの再会だった。竹谷君の父、スティーヴンさん(50)は米ボストン出身。石川県小松市で英語教室を経営しており、同県能美(のみ)市の「松井秀喜ベースボールミュージアム」の資料の英訳を手がけた縁で2008年1月、市内で会う機会があった。当時、大リーグ・ヤンキースにいた松井さん。
「デカいなあ」。小学1年だった竹谷選手はその迫力に感激した。ライバル球団のレッドソックスのユニホームを着ていって松井さんを苦笑いさせたが、「プロ野球選手になれるように頑張って」と握手をしてもらった。
星稜進学は松井さんへの憧れから。一緒に撮った写真は額に入れ、自分の部屋に飾っている。今夏の石川大会決勝で大会記録となる1試合4本塁打を放ち、優勝に貢献。甲子園の開幕試合を主将として自ら抽選で引き当てた。試合前の主将同士のじゃんけんで勝って後攻を選び、仲間が守備位置につく中で松井さんが始球式。右翼から見る背中に変わらぬ「オーラ」を感じた。
「大先輩の前で勝ちにこだわろうと思いました」。三回裏、自らも適時打を放つなど勢いに乗り、9―4で藤蔭(大分)を破って初戦突破。松井さんも記者席で校歌を口ずさんだ。「勝てたのが一番」と竹谷選手。ただ、4打数1安打だった自分の打撃には満足していない。「もっと打てるはず」。大先輩が果たせなかった全国制覇を目指す。(塩谷耕吾)