決勝が25日、石川県立野球場であり、星稜が22―0で金沢学院を破って2年ぶりの優勝を果たした。大会新記録の7本塁打で22得点の猛攻。守っても大会を通じて1点も相手に許さず、圧倒的な強さで46チームの頂点に立った。石川代表として出場する第100回全国高校野球選手権記念大会は8月2日に組み合わせ抽選会があり、5日に阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開幕する。
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父の言葉胸に「楽しんだ」 金沢学院・中智希主将
最後まで真っ向勝負。それが、金沢学院の流儀だった。主将で捕手の中智希(3年)は、「かわそうにも、かわせる相手ではない。完敗です」。信じられない数字が並んだスコアボードをしっかりと見つめ、続けた。「ぶっ倒れるまで全力を尽くす。それは出せた」
6月の終わり、チームの歯車は狂っていた。エース田中健介(3年)の故障、大会が迫る焦り。主将として余裕を失いかけた時、声が聞こえた気がした。
「楽しんでやるのが一番なんじゃないか」
2年前に胃がんで亡くなった父・伸行(享年46)の言葉が胸に広がった。
長く病魔と闘っていた父は、珠洲市立緑丘中時代も、抗がん剤治療をしながらすべての遠征に付いてきてくれた。「お前が野球をしていることが生きがいなんだ」
中3の秋、金沢学院進学の思いが膨らんだ。「学院で甲子園に行きたい」。珠洲市の家を離れることになる。心細そうな父の表情を覚えている。だが思いを伝えると、「本気か。行くならがんばれ」と背中を押された。「行く方も出す方もつらかった」と母の伊香(49)。その日から一家の夢は中が甲子園に行くことになった。
高1の10月、容体悪化の報を受け、病室に駆けつけた。「おお!」。大きな声で迎えられ、その晩、伸行さんは逝った。「待っていてくれたのかな。残っていたら、もう少し生きていたのかな」。思いは巡る。だが、後悔はない。覚悟していたことだから。
父の遺影はカバンに忍ばせ、いつも近くに感じている。監督の野口仁(39)は「オレに一番怒られた選手」という。だが、「一日一生」と懸命に生きた姿を胸に励んだ。今大会は3回戦から3試合連続で延長戦勝利。準々決勝では幼なじみの多い飯田から、延長十回に3点本塁打。その本塁打球はいま、実家の仏壇の前に飾ってある。
この日は4点を追う二回、先頭打者で二ゴロに倒れたが頭から一塁に滑り込んだ。ユニホームを泥だらけにしてチームを鼓舞したが、壁は高く、夢には届かなかった。それでも笑顔でいられる。「甲子園にはいけなかったけど、自分は楽しんでできたよ」。今のこの気持ち、きっと父は分かってくれるはずだ。=敬称略(塩谷耕吾)