政令指定市の市長選が24日告示され、大阪府と指定市の大阪市の関係性を問うダブル選が本格的に始まった。福岡県知事選でも、宿泊税や医療費助成をめぐる県と指定市の「ぶんどり合戦」が争点になっている。高島宗一郎・福岡市長は、現職の小川洋氏(69)とぶつかる自民推薦で新顔の武内和久氏(47)を支援しつつ、市寄りの決着に導こうと動く。
「小川知事からは、政令(指定)市ともしっかりやっていくんだということは聞くことができなかった」
高島氏は21日の武内氏の集会で、小川氏の姿勢を厳しく批判した。もともとそりの合わない高島氏と小川氏だが、宿泊税を県と福岡市のどちらが徴収するかで対立は決定的に。高島氏は、市による徴収を主張する武内氏を支援する。
宿泊税をめぐる争いは昨年秋に激化。市は昨年10月、宿泊費に応じて、税額を1泊200円か500円とする案を固めた。県も直後に、一律200円の原案をまとめた。県は妥協案として、市町村が独自に課税する場合に県分を100円に減らす案も用意するが、折り合いはついていない。
高島氏は選挙戦で、九州の玄関口になる博多港や博多駅周辺の整備を多額の市費で賄っていると市による徴収の正当性を主張。「負担が大きすぎるから、宿泊税を整備費に充てさせてほしい」と訴える。
一方の小川氏は「必要な財源は県が集めて、そのお金を的確に県内各地に配って、県全体の観光の力を上げていく」と説明する。
小学生までの子どもの医療費を助成する県の制度も論点になっている。県から市町村への補助率は、指定市以外は2分の1なのに指定市は4分の1。高島氏は指定市の補助率を2分の1に引き上げるよう求め、県民税の4割を福岡市民が納めているのに「半分なのはおかしい」との批判も展開する。武内氏は24日、北九州市の街頭で「県から政令指定市への子ども医療費の助成は他の市町村より少ない。これを引き上げる」と訴えた。
県の子ども医療費の予算は約51億6千万円。指定市への補助を上げるには16億円が必要だ。市町村の財政力格差への配慮を必要とする立場の小川氏は23日、記者団に「県全体の子どもの福祉(の水準)をそろえて上げていきたい」と説明。指定市の割合引き上げに否定的な姿勢を示した。
県による宿泊税導入の旗を振った県議会最大会派の自民党県議団は武内氏を支援。宿泊税で方向が同じはずの現職知事と戦うねじれた構図になった。高島氏は、そうした事情を見透かすように駆け引きを仕掛ける。武内氏が提唱する、福岡市で徴収した税収の一部を他の市町村に回す、という方式を、自民県議が並ぶ各地の出陣式で評価して見せたのも、その一つだ。高島氏周辺は「公の場で県議に市の主張を理解してもらえるいいチャンス」と話す。
知名度の高い高島氏の応援は、武内氏陣営の切り札。自民県議団も難しい対応を迫られている。
自民県連会長で県議団に強い影響力を持つ蔵内勇夫県議は出陣式で、高島氏と協議したことを明かしたうえで、「政治家同士が腹を割って話をすれば、解決できないことはない」とあいさつ。調整の余地があるとの考えを示した。
共産推薦で新顔の篠田清氏(70)は、宿泊税の導入「凍結」を訴えている。(福井悠介)