7日に投開票された名古屋市議選の熱田区選挙区(定数2)で、観光PR隊「名古屋おもてなし武将隊」元メンバーの憲俊(けんしゅん、本名・梅林憲太)さん(40)が落選した。
憲俊さんは7日夜、ちょんまげ頭に淡い緑の着物姿で、開票状況を伝えるテレビを見守った。現職の2人が当選確実と報じられると、「ああ。だいぶ、いかれたなー」と頭を抱えて叫んだ。事務所の外で待つ支持者に「現実って厳しいですね。助けてくれた仲間には『ありがとう』という気持ちです」などと伝えた。
「名古屋おもてなし武将隊」は2009年、緊急経済対策を活用した市の観光振興事業の一つとして発足した。下積み俳優だった憲俊さんは初代の織田信長役に抜擢(ばってき)され、名古屋城で甲冑(かっちゅう)を着て観光客をもてなし、歴史好きな女性らの集客に貢献した。12年にメンバー交代で退いた後も、地元でタレント活動を続けてきた。
立候補を決めたのは昨年末。地域政党「減税日本」を率いる河村たかし・名古屋市長に誘われ、悩んだ末に「政治と市民を近づけられるのは自分だ」と考えたという。
政策として、地元の熱田神宮の近くにグルメ横丁を設ける構想を掲げた。和服をまとって自転車で区内を巡り、金山駅前の街頭演説では「人間50年、下天のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなり……」と、信長が好んだとされる「敦盛」の一節を舞った。選挙戦終盤の5日は、金山駅前で「学歴もないし政治の能力もない。そんなやつでも政治に挑戦できるとなれば、何か大きなことが起きるんじゃないか」と呼びかけた。
7日夜、報道陣に「覚悟が足りなかった。もっと政治の勉強をしていれば、人に響く言葉が言えたはず。まだ市民の代表になる人間力ではなかった」と反省の弁を述べた。再挑戦については「だめだったから役者に戻ろうというのも悔しい。ただ、もう一度奮い立つかどうかは分からない」と話した。(関謙次、佐々木洋輔)