大阪府知事と大阪市長のダブル選は7日投開票され、知事選は前大阪市長の吉村洋文(ひろふみ)氏(43)、市長選は前大阪府知事の松井一郎氏(55)が、いずれも初当選を決めた。地域政党・大阪維新の会公認の両氏が勝ったことで、看板政策の大阪都構想が前進する可能性がある。都構想実現を左右する府議選と大阪市議選のうち、府議選で現有議席を10以上増やして過半数を獲得した。市議選も現有議席を上回ったものの過半数には届かなかった。
自民党や公明党府本部が推薦し、「反維新」勢力が支援するなどした、知事候補の無所属で元府副知事の小西禎一(ただかず)氏(64)と、市長候補の無所属で元自民大阪市議の柳本顕(あきら)氏(45)は敗れた。
吉村氏は当選を決めた7日夜の会見で「都構想への再挑戦に踏み出していきたい」、松井氏は「都構想に反対の意見も聴きながら丁寧に進めたい」と述べた。
一方、公明府本部の佐藤茂樹代表は7日夜、「民意を真摯(しんし)に受け止める。都構想にどう対応するか検討したい」と話し、協議再開を示唆した。
投票率は知事選が49・49%(前回45・47%)、市長選が52・70%(同50・51%)だった。
都構想は大阪市を廃止して東京23区のような特別区に再編する制度改革。都構想案の是非を問う住民投票の実施には府・市両議会で議決が必要だ。維新は市議会で過半数を得られなかったが、都構想案を作成する府市の法定協議会で単独過半数を占めることが確実になった。ただ住民投票の実施には、引き続き公明の協力が必要になる。
今回のダブル選は、住民投票の実施時期をめぐって公明との交渉が決裂したのを受け、松井、吉村両氏が3月に任期途中で辞職表明したため実施された。維新は知事・市長のポストを入れ替えて立候補する異例の「クロス選」を仕掛けた。
維新代表の松井氏と維新政調会長の吉村氏は選挙期間中、府と市が一体で進めた2025年大阪・関西万博の誘致成功などの実績を強調し、「(府と市が)バラバラにならないようにする仕組みを作るのが都構想」(松井氏)と訴えた。
これに対し、小西、柳本両氏は「都構想の議論に終止符を打つビッグチャンスだ」(柳本氏)などと訴え、反維新勢力として組織的な選挙運動を展開。国民民主党府連も支持、立憲民主党府連は自主支援、共産党は自主的支援とした。
反維新側は、都構想への反対やクロス選という選挙手法への批判などを打ち出して選挙戦を展開。維新の政治姿勢を厳しく追及したが、支持は広がらなかった。維新側は、維新以外のほとんどの政党が支援する相手陣営を「野合」などと批判。松井、吉村両氏の知名度も生かし、若者や無党派層を意識した選挙戦を展開するなどして票を積み上げた。
大阪で知事・大阪市長のダブル選と同時に大阪府議選と大阪市議選が行われるのは1971年以来48年ぶり。
維新は選挙前から両議会で最大会派だったが、議席数は過半数に達していなかった。今回の選挙では公認候補として府議選(定数88、過半数45)に55人、市議選(同83、42)に43人を擁立した。反維新陣営の中心になっている自民は、国政で連立を組む公明と合わせて両議会で過半数を獲得することを目標にしていた。