昨季王者の「下克上」が完結した。バスケットボール男子のBリーグチャンピオンシップ(CS)で、東地区3位のワイルドカードで出場枠に滑り込んだアルバルク東京が「不可能に思えた」(ルカ・パビチェビッチ監督)という2連覇を達成した。横浜アリーナで11日にあったCS決勝で、レギュラーシーズン(RS)最高勝率の千葉(東地区1位)に71―67で競り勝った。
A東京が2連覇 バスケBリーグ、千葉に競り勝つ
その戦いぶりは決して余裕のあるものではなかった。前半、チームの中心的存在の田中大貴は簡単なシュートを外す場面が目立ち、ミスを意味するターンオーバーも千葉より多い7を数えた。それでもリバウンド数で千葉を6本上回り、派手さはないがゴール下でしぶとく加点。前半を2点リードで終えた。
「試合中に修正できるのが自分たちの強みだと分かっていたので、焦りはなかった」と田中。第3クオーター(Q)は、本来ゴール下を主戦場とする竹内譲次が連続3点シュートで勢いをつけると、安藤誓哉、途中出場のザック・バランスキー、ミルコ・ビエリツァも3点シュートを沈めて19点差に。一人に頼らない総合力の高さを見せつけた。
そもそも、「昨季王者」という肩書が、決勝までの道のりを険しいものにしていた。各チームから徹底的に研究され、昨年12月まではなかなか勝てない日々が続いた。さらに、RSと並行してワールドカップアジア予選が佳境に入り、日本代表に選出されている田中、竹内、馬場雄大は過密日程に。パビチェビッチ監督が「チーム練習も満足にできない」といら立つこともあった。
ただ、そのまま終わらなかったのが王者の底力。CSで対戦した新潟、琉球、千葉はいずれもRSで勝ち越せていない相手だったが、「シーズンを通し、相手の対策に対抗するすべを覚えた。打ち崩す方法を選手全員が共通認識として持てた」と竹内。
決勝も、相手守備の狙いを読んだパス回しで、効果的に加点した。チーム最多の6アシストを記録した馬場は、「今日はたまたま自分が起点になる攻撃が効果的だった。全員で優勝を勝ち取れたことがうれしい」と喜びを分かち合った。
終わってみれば、3地区の1位すべてを破っての優勝。ワイルドカードからの頂点も連覇もリーグ初だ。ホーム戦が一つもないCSだったが、「その厳しい環境を乗り越えて、リーグで一番タフなチームになれたと思う」と田中。パビチェビッチ監督は「CSにさえ来られればチャンスはあると思っていた。選手たちはよく我慢してくれた」とたたえた。(松本麻美)