一回表、イチローは左腕のリーに対して腰を開かず、左翼へライナーで白球をはじき返した。試合開始直後の真剣勝負に勝ったイチローは、次打者の安打で二進後、適時打で本塁に生還した。幕開けからわずか6分間で、イチローは最初のシナリオを完結させてしまった。
七回の第4打席。今度はイチローが打席に入ろうとすると、突然、左翼のスプリンクラー2機が作動し、水をまき始めた。しばらく中断の後、左飛に倒れた。さすがのイチローも水を差されて、シナリオが狂ったか--。試合後「そりゃあ、初めて(の経験)ですよ」と苦笑いした。
5試合連続安打で3カード連続の勝ち越しに貢献したイチローは、メジャー6年目で900試合出場に到達した。イチローが大リーグ入りした01年以降に限ると、テハダ(オリオールズ)が916試合、A・ロドリゲス(ヤンキース)が902試合出場しているが、出場数がイチローより多いのはその2人だけ。実力と自己管理の両面で、トップクラスにある証拠だろう。
日本では試合数が少ないこともあり、9年間で951試合に出場。タフなメジャーに生きているイチローは「それしか出てなかったの?」と、かつての自分を振り返った。【高橋秀明】
毎日新聞 2006年7月31日