花王は2015年12月期に純現金収支(フリーキャッシュフロー=CF)を前期より2割強多い1000億円程度に増やす見通しだ。増配継続への原資を確保するのが狙いで、今期末の手元資金は過去最高に積み上がる見込みだ。フリーCFの黒字は借入金返済などにつなげるケースが多かったが、今後は株主配分に回す企業も増えそうだ。
今期の年間配当は6円増の76円を計画している。26期連続の増配で、実現すれば国内の主要企業では最長記録となる。配当金総額は1割増の400億円弱になる見込み。
競合する米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は14年6月期で58期連続の増配となっている。ライバル社の姿勢も意識しており、「来期以降も増配を続けて株主の期待に応えたい」(沢田道隆社長)という。
将来の増配原資を担保するためにフリーCFを拡大させる。前期のフリーCFは813億円だったが、今期は200億円程度上積みする。手元資金は前期末の2286億円から今期末には一気に2700億円前後まで増え、過去最高水準になる見通しだ。
連続増配への原資を確保するために、来期以降も1000億円超のフリーCFの黒字額を維持させる方針だ。
今期の連結純利益は9%増の870億円を見込む。フリーCFを増やすために在庫回転率などを高めて、現金収入は利益以上に伸ばす。設備投資は前期比3割増を見込んでいるが、現金収入よりは上積みを抑えて手元に残るキャッシュを増やす。
花王は増配だけでなく自社株買いも検討する。技術分野を軸としたM&A(合併・買収)も選択肢とし、日本とアジアで高付加価値製品を生み出して「稼ぐ力」を強化する。現状3割の海外売上高比率は20年をメドに5割にまで引き上げる目標を掲げている。
市場では「会社の利益予想は保守的で上振れ余地がある。投資と株主配分は両立できる」(みずほ証券の佐藤和佳子シニアアナリスト)との声が聞かれた。