【ニューヨーク=杉本貴司】米ゼネラル・モーターズ(GM)は9日、50億ドル(約6000億円)の自社株を買うと発表した。増配と合わせて2016年末までに100億ドルを株主に還元する。09年の経営破綻時に米政府の要請でGM再建に関わった人物が「物言う株主」として株主還元を要求。株価は低迷しており、GM経営陣は苦渋の決断を迫られた。
GMは経営破綻後に、米政府が過半出資で国有化した。13年末にはGMが米政府から自社株を買い取るなどして「脱国有化」を果たした。その後、株価は低迷しており、9日終値は13年末比8%安。自社株買いは株主の不満に応じる目的だ。
株主還元をGMに働きかけたハリー・ウィルソン氏はオバマ政権の要請で米政府のGM再建チームに加わった経歴の持ち主。今回はGMに出資する複数の投資ファンドを代表し、80億ドルの自社株買いと、同氏のGM取締役会入りを要求した。
同氏はGMとの交渉の結果、50億ドルの自社株買いで妥結し、取締役就任の要求を取り下げた。「可能な限りの純現金収支を株主に還元する」との約束も取り付けた。
ただ、GMを取り巻く事業環境は厳しい。世界販売の65%を米中の2カ国に頼り、東南アジアやインド市場の開拓に資金を投じている。巨額赤字の南米や欧州のリストラも急務だ。出遅れたエコカーの開発にも巨額の資金が必要だ。
GMは破綻時に、レガシーコストと呼ばれる従業員への高額な医療費や年金の支払いが業績悪化の一因となった。株主還元が新たな経営の重荷になるリスクもある。