関西電力高浜原子力発電所3、4号機(福井県高浜町)の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、福井地裁は14日、再稼働を認めない決定をした。樋口英明裁判長は「合理性がない」と原子力規制委員会が定めた原発の新規制基準を全面的に否定した。すぐに効力を持つ仮処分決定での原発運転禁止は初めて。今後の司法手続きで仮処分が取り消しされない限り再稼働はできず、関電の経営環境は一段と厳しくなりそうだ。
関電の高浜原発3号機(手前)と4号機(2014年11月、福井県高浜町)
2基は2月、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)に次いで規制委の審査に合格。関電は11月の再稼働を想定し地元同意の手続きに入っていた。今月22日には川内原発の再稼働差し止めの仮処分決定が鹿児島地裁で予定されている。
菅義偉官房長官は14日の記者会見で「政府としては再稼働を進めていく方針には変わりはない」と述べた。関電は決定を不服として福井地裁に異議申し立てなどをする方針だ。
樋口裁判長は昨年5月、関電大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止め訴訟でも再稼働を認めない判決を出している。今回の決定も大飯原発判決とほぼ同じ論理構成だった。
決定は、耐震設計で想定する最大の揺れの強さである基準地震動を700ガル(ガルは加速度の単位)とした関電の想定を「信頼性がない」と指摘。「想定を超える地震が起きれば、施設が破損する恐れがあり、炉心損傷に至る危険が認められる」と判断した。
想定を下回る地震でも冷却機能喪失による重大な事故が生じる可能性を指摘し、使用済み核燃料プールの設備も堅固でないとした。規制委の新規制基準については「適合しても安全性は確保されない」と批判。「住民の人格権を侵害される危険性があり、訴訟の結論を待つ余裕がない」と仮処分の必要性を強調した。
今回、住民らが仮処分を求めたのは高浜と大飯の2原発で、大飯原発は分離され審理が続く。
福井地裁の決定骨子
○高浜原発3、4号機を運転してはならない
○想定を超える地震が起きないとの根拠は乏しく、想定を下回る場合でも冷却機能喪失による重大事故が生じる可能性がある
○使用済み核燃料プールの設備も堅固ではない
○原子力規制委員会の新規制基準は合理性を欠き、適合しても安全性は確保されない
○原発の運転により住民の人格権を侵害される具体的な危険性がある