【ワシントン=矢沢俊樹】米連邦議会の超党派は16日、議会が大統領に強い通商交渉の権限を委任する大統領貿易促進権限(TPA)法案を上下両院に提出した。期間は最大6年で、貿易相手国による「為替操作」の防止をめざす条項も盛り込んだ。環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉妥結の大前提となる法案で両院の審議と成立の行方が次の焦点になる。
年内のTPP合意をめざすオバマ大統領は「法案可決にむけて与野党と協力する」とし、超党派法案の提出を歓迎する声明を発表した。米通商代表部(USTR)のフロマン代表も声明で「TPAによってTPPなどの実現に近づく」とした。
野党・共和党のハッチ上院財政委員長と与党・民主党のワイデン同委筆頭理事、共和下院のライアン歳入委員長が共同提出した。米議会における最初の関門をひとまず越えた。
TPA法案は、大統領が結んだ外国との通商協定を米議会が一定期間内に一括承認することを認めるのが柱だ。大統領に最大6年まで権限の延長を認める一方で、通商合意の中身が「米の目標に照らして不十分」だった場合などに議会が一方的にTPAを破棄できる条項も盛り込んだ。TPP慎重派の理解を得やすくするために議会に一定の権限を残した。
米議会で関心の強い為替操作への対応は「協調メカニズムなどを通じて通商相手国の為替操作を回避する」とした。具体策は不明な部分が多く議会でも見解が割れそうな内容となった。
さらにTPAに慎重な民主に配慮し、輸入増に伴う企業業績の悪化などが原因で失業した労働者に税金で所得を補償する貿易調整支援(TAA)と呼ばれる措置も検討している。