九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の運転差し止めを住民らが求めた仮処分申請で、鹿児島地裁は22日、申し立てを却下した。川内原発は7月にも再稼働し、2年ぶりに原発ゼロが解消する見通し。関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働を認めなかった14日の福井地裁と司法判断が分かれたが、エネルギー政策への影響はひとまず回避された形だ。
22日午前、鹿児島地裁の決定を耳にした経済産業省幹部は「司法は生きていた」と胸をなで下ろした。14日に関電高浜原発3、4号機の差し止め申請を福井地裁が認めたばかり。「安全確認された原発は再稼働する」方針の政府にすれば連鎖は避けたいところだった。
川内1、2号機は2014年秋に原子力規制委員会から安全審査の合格証を取得済み。今回の決定要旨には「(規制委の適合性判断に)不合理な点は認められないというべき」との文言も入った。規制委判断にお墨付きを得た九電は川内原発の今夏再稼働をめざす。
川内原発は地元同意が済み、再稼働手続きが最も進んでいる原発だ。1号機は現在、規制委の「使用前検査」を受けている。7月には13年9月に関電大飯原発4号機(福井県)が停止して以来、約2年ぶりに国内の原発ゼロが解消する方向だ。
規制委の田中俊一委員長は22日の記者会見で、基準に基づく安全審査など再稼働にかかわる規制について「粛々と進める」と語った。
原発再稼働に道を開く地裁決定は30年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)を巡る議論にも影響する。
政府はコストや環境への影響などを加味し、来週前半にも原発比率を20%程度とする案をまとめる。燃料コストや温暖化ガス排出の面で、原発は火力発電より優れていると主張する構えだ。再稼働が遅れると、電気料金が高くなるリスクもある。地裁の決定次第では原発比率の引き下げを求める声が強まる可能性もあっただけに、ひとまず政府シナリオの狂いは回避されたといえる。