経営難にあえぐ山形県鶴岡市の市立加茂水族館を、世界有数のクラゲ展示種類数を誇る人気スポットによみがえらせた村上龍男さん(75)が3月末、50年近い館長生活にピリオドを打った。4月から水産高校の教壇に立ち、未来の「クラゲ館長」育成に力を注ぐ。
村上さんは1967年、前任者の引退に伴い飼育係から館長に転身。長く続いた赤字経営を打破するため、97年からクラゲを生かした展示を始めた。円形の巨大水槽を設置したり、クラゲを使った食事会を企画したりといったアイデアが奏功し、今では連日、全国のクラゲ好きが集まる。
館長引退後の新天地に選んだのは、水族館近くにある県立加茂水産高だった。「現場での経験を語ってもらいたい」との打診を受け、3年生に魚の養殖法などを教える「水族館学概論」で臨時講師を務める。
4月半ばの授業で、水族館経営を取り上げた。クラゲ入りまんじゅうを売り出したエピソードを披露した時には「入ってない方がうまいんだけどね」と落ちをつけ、場を盛り上げた。
一緒に授業を進める佐藤亘教諭(42)は「どん底からはい上がってきた人。言葉一つ一つに説得力がある」と話す。
一方、水族館ではシニアアドバイザーに就任した。「元気か」「調子はどうだ」。後輩を気さくに励ます姿は、館長時代と変わらない。
「眠れないほど悩むこともあるかもしれない。それでも挑戦して、自分の夢をかなえてほしい。そう伝えたいね」。これからも、若者の背中を押し続けていく。〔共同〕