米軍の元首脳数人が米議会に対し、太平洋および大西洋での野心的な貿易協定(注:環太平洋経済連携協定=TPP=と環大西洋貿易投資連携協定=TTIP=)をまとめるために必要なファストトラック権限をバラク・オバマ大統領に与えるよう要請し、協定が成功しなかった場合の「有害な戦略的影響」について警告した。
■議論のさなかに書簡送る
民主党の集会で演説するオバマ米大統領(7日、ポートランド)=ロイター
コリン・パウエル氏、レオン・パネッタ氏、ドナルド・ラムズフェルド氏、デビッド・ペトレイアス氏を含む元国防長官や退役米軍首脳17人は民主、共和両党の議会指導部に宛てて7日に書簡を送った。今回の介入は、ワシントンで貿易を巡る激しい議論が行われているさなかの出来事だ。
「利害ははっきりしている。とてつもなく大きな戦略的恩恵がある。また、我々がこれらの合意をまとめられなければ、有害な戦略的影響があるだろう」。元米軍首脳は書簡にこう書いた。「アジア太平洋、大西洋双方で、米国の同盟国やパートナーが我々のコミットメントに疑問を抱き、我々の決意を疑い、必然的に他のパートナーに目を向けることになる。米国の名声と影響力、リーダーシップが危険にさらされている」
オバマ氏は米国の交渉相手に対し、政権がまとめた合意を議会が破棄しないことを保証するために、正式には貿易促進権限(TPA)と呼ばれるものを必要としている。先月提出されたTPA法案は、過去何十年も歴代大統領全員が何らかの形で持った権限を大統領に与え、貿易協定案に関する議会審理を単純な可決か否決かの採決に限定し、批准のために協定案が提出されてから90日以内に議会が判断を下すことを義務づける。
大統領は上下両院の多数派である共和党の支持を得ており、ファストトラックに関する採決が今後数日ないし数週間内に行われるとみられている。
■反対派、雇用流出を懸念
だが、オバマ氏は自党内のメンバーから大きな抵抗に遭っている。その筆頭格が、民主党左派勢力の事実上のリーダーであるエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)だ。
ウォーレン氏と同氏の支持者らは、貿易協定は米国の雇用の海外流出につながり、米国の規制に対する企業の抵抗を招き、2008年の金融危機の後に導入された厳しい金融規制の解体をもたらすと主張している。
オバマ氏はこうした主張を退け、ウォーレン氏を「間違っている」、同氏の主張の一部を「荒唐無稽」と呼んだ。だが、オバマ氏は、議会の民主党議員の過半数がTPA法案に反対票を投じ、他の民主党指導部が進展を懸命に阻止する可能性に直面している。