【ワシントン=矢沢俊樹】米議会予算局(CBO)は16日、米連邦政府の長期財政見通しを公表した。財政赤字の米国内総生産(GDP)に対する比率は2040年に5.9%となり、15年の推計値の2.7%から2倍以上に膨らむ。将来の金利上昇や大増税が成長を阻害しかねないとして10年間で大胆な財政赤字削減に踏み込むのが賢明だとの認識をにじませた。
最新の見通しによると米経済の緩やかな景気回復と税収増に伴い、15年の米財政赤字のGDP比は2.7%となり、08年の金融危機後の最悪期だった10%の4分の1程度まで改善する。
中長期的にはオバマケア(米医療保険改革)で段階的に保険支給の対象者が拡大されるなどして公費(税金)負担も大きく膨らむ。現行の社会保障政策を前提とすると財政も悪化の一途をたどりそうだ。25年には赤字のGDP比は3.8%に上昇する。さらに高齢化で連邦政府の支出増には拍車がかかり、25年後の40年にはこの比率が5.9%まで高まる。
米成長の勢いがやや鈍る傾向にあることから連邦政府が支払わなければならない長期的な金利水準も押し下げられるため、14年にまとめた見通しに比べると、連邦政府の債務状況はやや改善するという。
見通しでは米経済の巡航速度といえる潜在成長率について、向こう25年間の平均で年2.2%になると仮置きした。米連邦公開市場委員会(FOMC)による推計値の範囲内にある。人口増が鈍化したり、女性の労働参加も頭打ちとなったりするため成長の源泉である労働投入量が減り、1965年から07年を平均した年3.3%から大幅な低下が避けられない見込みだ。
一方、インフレ率を勘案した実質長期金利は年平均1.9%で推移する見通し。経済成長のテンポが金利の伸びをかろうじて上回るため、米連邦債務のGDP比が加速度的に高まる懸念はないとしている。
もっとも財政悪化を放置すればいずれかの時点で赤字圧縮のために急激な増税を迫られ家計が圧迫されるばかりか、長期金利上昇と投資減で米経済の勢いをそぎかねない。向こう10年で総額4兆ドル(500兆円弱)程度の大規模な赤字削減に取り組むほうが、金利抑制などを通じて財政が経済に及ぼす悪影響を軽減し、結果として赤字圧縮が緩やかな場合よりも成長率を押し上げる可能性があるとのシナリオを示した。