死刑求刑が予想される事件で適切な弁護活動をするため、日弁連が初めて会員向けに独自の手引を作成した。日弁連は死刑執行に反対の立場だが「制度がある以上、特別な弁護が必要」として、全国の弁護士会に配布した。
手引は110ページ。米国法曹協会のガイドラインを参考に、死刑事件の弁護経験が豊富な弁護士らを中心に約3年かけて作成した。捜査段階から判決確定後まで、それぞれの場面で求められる対応を詳しく記している。
死刑を回避するためには、警察や検察の捜査とは別に独自の調査をして可能な限り情報を集め、立証計画を立てるべきだと指摘。手引作成の中心となった後藤貞人弁護士は「これまでは事件や被告について徹底的に調査するという意識が薄かった」と解説した。
死刑確定後には再審請求に向けた準備を進めるなど「執行されるまでが弁護人の務め」とした。
一方、否認事件などのケースでは、被害者や遺族が裁判で被告に直接質問することができる「被害者参加」に反対することも盛り込み、被害者支援に取り組む弁護士から批判も出ている。
今後、ノウハウを蓄積して手引を改訂するため、起訴状や判決文などの書類を日弁連に集約する予定。後藤弁護士は「誰が担当しても最高レベルの弁護ができるようにしていきたい」と話した。
常磐大大学院の諸沢英道教授(被害者学)は「被害者参加に反対するのは被害者や遺族の人権を侵害することだ」と話している。〔共同〕