7月に統合協議入りで合意していた出光興産と昭和シェル石油は12日、統合方法として合併を基本方針とすることを決めた。「対等」の精神を強調し、統合に向けて融和を目指す姿勢を鮮明にした。ガソリンスタンドにも将来、中立的な新ブランドの導入を検討し、5年目に年間500億円の統合効果を目指す。「対等感」を重視しながら今後、統合効果をどう高めるかが課題になる。
出光と昭シェルが7月に統合協議入りで合意した際、統合方法は白紙の状態だった。それから3カ月余りの議論を経て、新会社を設立してそれぞれをぶら下げる方法ではなく、合併を軸に検討を進めることを決めた。
合併ではどちらを存続会社にするかを決める必要があるが、両社が一体となって迅速な意思決定を進められる効果を期待できる。
連結売上高は出光が4兆6297億円(2015年3月期)と昭シェルの2兆9979億円(14年12月期)を上回る。存続会社や合併比率は今後実施する資産査定に基づいて決めるが、経営の体制作りは「対等の精神でのぞむ」(出光の丹生谷晋取締役)方針だ。
出光は16年度上期をメドに英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが保有する昭シェル株約33%を先行して取得。その後、株式交換などを利用して合併する方向だ。
給油所のブランドマークについては一定期間、既存のものを併用。その後に新ブランドについて議論を進める考えだ。
新ブランドの導入を検討するのは、消費者に統合を印象づけるのに加え、新しい1つのブランドを打ち出すことでどちらかが吸収されたような印象を避けるためだ。
両社は全国で7製油所と約7000カ所の給油所を持つ。製油所については互いに補完関係にあるとして、統廃合は実施しない方針。人員についても「会社の都合で強制的な削減はしない」(出光の丹生谷氏)という。500億円の統合効果については、生産計画や物流の最適化などで生み出すとしている。
石油元売り業界は内需の縮小で収益環境の悪化が続いている。そうした中で出光と昭シェルが統合を決めたのは「勝者なき戦いを繰り広げている状況を解決するため、真のリーディングカンパニーを目指す」(昭シェルの渡辺宏執行役員)との考えからだ。
将来は内需縮小に対応し、痛みを伴う決断が必要になる可能性もある。既存の経営資源を有効活用しながら、どこまで統合効果を実現できるかが問われる。