農林水産省は27日、農業の実態を調べるため5年に一度まとめる農林業センサスの2015年版(概数値)を発表した。農家あたりの耕作地の面積は10年の調査に比べて1割以上増えるなど農家の規模がじわりと拡大している現状が明らかになった。5ヘクタール以上の耕地面積をもつ大規模農家は5年前より約9割増えた。一方、農業の担い手は高齢化が進み、後継者不足が一段と深刻になっていることも分かった。
農林業センサスは農業政策の基本計画づくりに役立てるため、就業構造や経営状況を分析している。調査は1950年に始まり今回は14回目だ。
農家1戸あたりの平均の耕作地面積は5年前の2.2ヘクタールから2.5ヘクタールに増えた。5ヘクタール以上の耕地面積をもつ大規模農家は10万4千と、10年の前回調査より93%増えた。
全農家数に占める大規模農家の割合は8%にとどまるが、これらの農家がもつ農地の面積は増えており、全国の農地の58%と過半を占めた。
農家の規模が大きくなっている背景の1つは農業法人の増加だ。法人数は2万7千と5年前より26%増えた。信用力が高く資金調達しやすい、従業員に社会保険を提供できる、などの理由で農業に参入する企業などが法人形態をとる例が多いという。
2009年の農地法改正で企業の農地所有の規制が一部緩和され、企業は農業に参入しやすくなった。14年に稼働した農地中間管理機構(農地バンク)を通じて零細農家から農地を借りる企業も増えている。
一方、農家の高齢化や後継者不足には歯止めがかからない。50歳未満の農業従事者は25万1千人と5年前より23%減少。平均年齢も66.3歳と0.5歳高くなった。中山間地域では離農が相次いでおり、耕作放棄地の面積は42万4千ヘクタールと5年で7%増え、富山県とほぼ同じ面積となった。
政府が25日決めた環太平洋経済連携協定(TPP)の政策大綱では、農地集約や人材育成を対策の柱に据えた。TPP発効で輸入品の増加が見込まれるなか、農家の生産性向上や後継者不足の解消につなげる具体策づくりは待ったなしだ。