【ブリュッセル=森本学】北大西洋条約機構(NATO)は1日、ブリュッセルで開いた外相理事会で、加盟国トルコの防空体制を強化することで一致した。同理事会はトルコがシリア国境付近でロシア軍機を撃墜して以降、初のNATOの閣僚会合となる。ロシアとの緊張が高まる中で、加盟国がトルコに艦船や軍用機、ミサイルなどの配備を通じて支援を強化する方針を打ち出した。
NATOは同日公表した「トルコへの安心供与」と題した声明文で、シリアやイラクと接するトルコ南東部の国境の情勢を「引き続き非常に不安定だ」と指摘。「テロを含め、南方からの多様な脅威に直面しているトルコに強い連帯感を示す」と強調し、今後数週間でトルコの防衛支援策をまとめる方針を明記した。
トルコではロシア機撃墜を巡るロシアとの関係緊迫化に加えて、隣接するシリアやイラクで過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)が勢力を拡大。NATOにとってトルコ南東部の国境の防衛力強化が急務となっていた。
ストルテンベルグ事務総長は1日の記者会見で、トルコ支援強化を巡っては、すでに英国が複数の軍用機をトルコの軍事基地に配備する意向を表明したと説明。デンマークも軍用艦を地中海に展開させる方針だと明かした。
ただ事務総長はトルコの防衛強化は「数年前から準備していた。先週の(ロシア機撃墜という)出来事とは別の問題だ」とも強調。ロシアが対トルコへの強硬姿勢を強める中、「今大事なのは冷静さと緊張緩和だ」と述べ、トルコとロシアの双方に直接対話による事態の沈静化を促した。
外相理事会は2日まで開く。1日の会合では、不安定なアフガニスタン情勢への対応も協議した。米国が来年も駐留米軍の規模を維持する方針を決めたことを受けてNATOも同調。2015年初から訓練を主体とした任務に移行していたNATOの駐留部隊について、16年までは1万2000人規模を維持する方針を決めた。