【ワシントン＝吉野直也】カーター米国防長官は１日の下院軍事委員会の公聴会で、中東の過激派組織「イスラム国」（ＩＳ）掃討のために米特殊部隊を派遣する方針を明らかにした。規模は数十人になる見通し。戦力の逐次投入を余儀なくされ、ＩＳに対するオバマ政権の戦略の迷走が浮き彫りになっている。

カーター氏は公聴会で特殊部隊派遣の目的について「幹部の拘束や人質解放、情報収集、ＩＳの捕獲に当たる」と説明した。同時に「イラク軍やイラク北部クルド自治政府の治安部隊ペシュメルガを支援する。シリアで単独作戦も遂行する」と強調した。

米国はイラクに既に約3500人規模の米兵を派遣している。10月末にはシリアへの50人未満の特殊部隊の派遣を決めた。カーター氏は今回の特殊部隊の規模がその時よりも「大きくなる」と指摘した。「トルコは（シリアとの）国境の管理を厳格化しなければならない」とも述べた。

パリ同時テロを受け、英仏などが空爆を強化している一方で、トルコのロシア軍機撃墜により、両国の緊張が高まっている。米軍が主導する有志連合の空爆はすでに１年を超えるが、ＩＳの進撃は止まらない。

ＩＳ掃討で空爆の効果が限定的なことは明白だ。イラク軍はＩＳと戦える水準にはなく、米軍が軍事支援するシリアの反政府勢力は、ロシアの空爆で壊滅的な打撃を受けた。ＩＳの本格掃討に向けて地上戦をどうするかの議論が再燃する公算は大きい。