水俣病の公式確認60年を記念した特別講演会(水俣フォーラム主催、朝日新聞社など後援)が3日、東京都文京区の東京大学安田講堂で始まった。識者や熊本県水俣市の漁師らが講演し、約900人が耳を傾けた。5日まで。
会場のステージ上には、水俣病患者約500人の遺影が掲げられた。患者と深くかかわる作家、石牟礼道子さん(89)作の能「不知火」の一部が演じられ、石牟礼さんは熊本市からの中継映像で「水俣病の事件と一緒に生活して参りました」などと語りかけた。
講演会では環境経済学者の除本理史(よけもとまさふみ)さん、映画監督の森達也さん、ノンフィクション作家の柳田邦男さん、水俣市の漁師の杉本肇さんが登壇。認定患者の母の遺志を継ぎ、2008年から水俣病の語り部活動をしている杉本さんは「患者認定された日、母は『おら水俣病になった』とずっと泣いていた。治らない病気を抱え込んでいくことがどんなにつらいか。失敗を二度と起こさぬよう語り継いでいく」などと語った。
参加した東京都練馬区のアルバイト山谷歩さん(26)は「水俣の光と影の両方を知るためにも、一度現地に行ってみたくなった」と話した。(服部誠一)