道下徳成・政策研究大学院大教授=東京都港区、井手さゆり撮影
初の米朝首脳会談が実現した。米朝や南北で非核化に向けた協議が進めば、在韓米軍の縮小・撤退は協議の対象になるのか。縮小・撤退が現実になった場合、在日米軍、日本にどう影響するのか。日米の専門家に今後予想される展開を語ってもらった。(聞き手・佐藤武嗣)
道下徳成・政策研究大学院大学教授
――トランプ米大統領は初の米朝首脳会談を受け、米韓合同軍事演習の中止を打ち出し、在韓米軍削減の可能性に言及しています。
「削減はありうる。トランプ大統領自身も在韓米軍の削減に前向きな発言をしており、米陸軍も兵力の見直しに取り組んでいる。一方、韓国は防衛能力をこの10年で格段に強化。国防費は世界10位で、弾道ミサイルと巡航ミサイルを合わせ1千発以上保有するまでになった。韓国内で、『強固な米韓同盟』は保守派のお家芸だったため、現在の進歩的な文在寅(ムンジェイン)政権は米軍に完全撤退されると困るが、多少力をそいだ方が政治的に得策との計算があるかもしれない。こうした要素が同時に作用して削減の方向に行く可能性がある」
――朝鮮戦争終結宣言や平和協定を結ぶことで、在韓米軍削減ということになりますか。
「法的には関係ない。在韓米軍の駐留は、米国と韓国の主権事項だ。平和協定を結んだとしても、法的には米軍が韓国に駐留し続けても問題はない。ただ、政治的な議論として、平和協定を結んだのになぜまだ米軍が駐留しているのかという議論は、米韓両国内で起きるかもしれない」
――戦争終結宣言に向かえば、南北でどのようなことが起きると思いますか。
「韓国は宣言はあくまで政治的なもので法的意味はないというかもしれないが、北朝鮮は『平時になった』と主張し、中国が国連安保理の場で終戦決議をしようと動けばだれもノーとは言えない。国連が終戦決議をすれば、1950年の韓国防衛決議は無効化され、国連軍司令部を維持する根拠はなくなる。根拠が希薄になれば、休戦協定を平和協定に変えようとなるのではないか」
――4月の南北の板門店宣言で…