ゲノム編集技術を使ったブタの遺伝子改変を、従来より簡単にできる方法を、徳島大などのチームが開発した。米科学誌サイエンス・アドバンシズ(電子版)に15日、発表した。
ゲノム編集をしたブタをつくるにはこれまで、体細胞の遺伝子を編集した後、核の部分をガラス管を使って、あらかじめ核を取り除いた卵子に移植する方法が一般的だった。ただ、核移植には高い技術が必要で時間もかかり、狙った通りに遺伝子改変された子ブタが生まれる確率も低いという。
徳島大の竹本龍也助教(発生生物学)らは、ブタの受精卵を特別な溶液につけて電気を流し、細胞の膜に一時的に穴を開けてゲノム編集に使われる物質や酵素を細胞内に入れる方法を確立した。実験では筋肉の増殖や肥大を抑制する遺伝子「ミオスタチン」を働かなくするようゲノム編集した受精卵を作製。子宮に戻したところ誕生した10匹のすべてで遺伝子が改変されているのを確認した。そのうち2匹は顕微鏡の観察で筋肉繊維の増加が認められたという。
竹本さんは「ガラス管の操作技術なしにゲノム編集ができることで、時間も人手も効率化できる。今後は、人の病気の研究に使うブタを短時間で作ることや、食肉の生産向上につなげることができるかもしれない」と話している。(福宮智代)