発がん性物質「オルト・トルイジン」を扱う工場の従業員らが膀胱(ぼうこう)がんを発症した問題で、厚生労働省は21日、別の発がん性物質も発症に関連した可能性があると発表した。
オルト・トルイジンを扱う三星化学工業(東京)の福井県の工場で従業員らが膀胱がんを発症したことを受け、厚労省はオルト・トルイジンを扱う全国の事業場を調査。別の企業の事業場(従業員約200人)でも、従業員1人と退職者6人の計7人の男性が膀胱がんを発症したことを確認した。うち少なくとも4人はオルト・トルイジンを扱う部署での勤務経験がなく、発症の原因を調べていた。
この事業場には2003年まで「MOCA(モカ)」という別の発がん性物質を扱う工場があり、オルト・トルイジンを扱っていない4人のうち3人が10年前後勤務していた。オルト・トルイジンを扱っていた2人もこの工場に勤めていた。MOCAは主に建築建材を作る際の硬化剤の原料として使われ、粉状になる。工場内の空気中濃度が高かったことを示す記録が残っており、厚労省の担当者は「従業員は吸引したとみなされる」としている。
ただ、発症した7人のうち2人はどちらの物質も扱ったことがない可能性があるという。厚労省はMOCAと発症との因果関係を詳しく調べる。MOCAを扱う事業場には特殊健康診断が義務づけられていて、昨年は全国178事業場で約2千人が受診した。これらの事業場で膀胱がん発症の事例がないかも調べる。(千葉卓朗)