四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求め、大分県の住民264人が28日、大分地裁に集団提訴した。豊後水道を挟んで対岸にある伊方原発は大分県と最短で約45キロしか離れておらず、過酷事故が起きた場合、放射性物質による汚染を避けられないと訴えている。
伊方原発の運転差し止めを求めた提訴は松山、広島の両地裁に続き3件目。8月に再稼働した3号機の運転差し止めとともに、停止中の2号機も再稼働しないよう求めている。1号機は廃炉方針が決まっている。
伊方原発の近くには国内最大規模の活断層「中央構造線断層帯」が走る。訴状では、伊方原発で耐震設計のもととして想定されている揺れでは「安全性が保証されたとは言えない」と主張。大分市中心部までの距離は約70キロで、遮るものもないため、過酷事故が起きて東からの風が吹くと原告らに深刻な被害が及ぶとしている。
原告団の中心メンバーは7月から、100人を目標に原告を募ったが、実際は広島訴訟の約150人(8月現在)を大きく上回った。弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は、4月の熊本地震で震源域が大分県にも拡大したことなどから「熊本地震による危機感が、多くの県民に原告団への参加を促したのではないか」と話している。四電の担当者は「安全性について理解頂けるよう丁寧に立証したい」と話した。原告団の一部は、3号機の運転差し止めの仮処分も大分地裁に申し立て、審尋が続いている。(女屋泰之)