岩手県大槌町の天然記念物に指定されている淡水魚「イトヨ」を見る天皇、皇后両陛下=9月29日午前、同町役場
天皇、皇后両陛下は9月28日~10月2日、岩手県を訪れました。第71回国民体育大会の総合開会式への出席にあわせ、東日本大震災の復興状況を視察するため、近年では異例の4泊5日の長期日程です。県内の移動はすべて車で、走行距離は約380キロメートル。80歳を超える両陛下にはハードな旅です。
皇族方の素顔
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しかし、天皇陛下が8月のお気持ち表明で天皇の務めとして語った「人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切」の言葉通り、被災者に寄り添い続けました。その一端を紹介します。
花巻空港に降り立った陛下は、出迎えた達増拓也知事にその場で「台風の被害はどうですか」と尋ねました。台風10号による甚大な被害に心を痛めていたからこその発言だと感じました。この日、知事から台風の被害状況や震災の復興状況の説明を受けた陛下は「漁業の復興状況はどうですか」「農業の被害はどうですか」などと熱心に質問しました。
予定外の行動もありました。侍従によると、休憩で立ち寄った遠野市と釜石市で急きょ地元の市長や議長を呼び入れ、復興状況などについて話を聞きました。宿泊先で大槌町長から復興状況の説明を受けた際は、予定の倍の時間をかけて熱心に耳を傾けたそうです。
大槌町の宿泊先は、19年前にも両陛下が宿泊し、被災後に営業を再開したゆかりのホテル。陛下は出迎えた社長を「頑張りましたね」とねぎらい、皇后さまは遺影を持つ親族を「大変でしたね」といたわりました。両陛下は、かつて散策した砂浜が震災で地盤沈下した様子を部屋から眺めたといいます。その様子について、侍従は「言葉もなく、悲しそうな表情でご覧になっていたのが非常に印象的だった」と明かしました。
大槌町や山田町は、両陛下にとって震災後初めての訪問となりました。それぞれで復興状況を視察し、大槌町の卸売市場では水揚げされた魚の仕分け作業などを見学しました。陛下は「試みが良い成果を上げて本当に良かったですね」などと声をかけていました。
小雨の中、大槌町役場前で出迎えた高齢の被災者らに両陛下が歩み寄りました。予想外の行動に関係者や記者も慌てて後に続きます。「震災の時は大変だったでしょう」「どうぞお元気で」と次々に声をかける陛下。皇后さまから「大変でございましたね」と声をかけられた古舘三枝子さん(67)は、御所で育てられているハマギクについて「大事にして下さって」と感謝の気持ちを伝えました。精力的に交流する両陛下は、侍従の「そろそろお時間でございます」との言葉も意に介しません。
山田町役場前でも出迎えた被災者らに近づき、触れあいました。山崎シゲ子さん(83)から「いつもお心を寄せて頂いてありがとうございます」と伝えられた陛下は、自宅が再建できたことを聞き、「良かったですね」。別の日に釜石地区合同庁舎前で陛下から「落ち着きましたか」と声をかけられた長谷川静子さん(78)は「震災に続き、遠い所まで2度もいらして頂くのは本当に大変なこと。力になります」と涙ぐみました。
遠野市総合防災センターの前に…
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