ソフトバンクは、月20ギガバイトまでのデータ通信を6千円で提供する料金プランを発表した=9月8日、東京都内
携帯電話大手3社がこの秋から、相次いで実質値下げプランを追加した。対象はデータを大量に使う人、ほとんど使わない人の両極端だ。格安SIM業者に利用者を奪われないよう、お得感を出す狙いがある。一方、利用者の大半を占める「中間層」の料金は据え置き、収益減を避けようともしている。
NTTドコモは19日、従来型携帯電話(ガラケー)向けの新料金を発表した。データ通信なしで5分以内の通話なら何度でもできるプランが月1200円(料金はすべて税別)、データ通信つきが月1800円からで、これまでより1千円安い。KDDI(au)とソフトバンクも、ほぼ同様の料金を打ち出した。
狙いは、ガラケーから格安SIM各社のスマートフォンへの乗り換えを食い止めることだ。格安各社の料金は、スマホの端末代金と基本通信料を合わせて月2千円前後が主流。データ通信を多く使わない人なら、ガラケーの料金水準と差がなくなっていた。
一方、スマホ向けの実質値下げも進む。大手3社は9月、データ通信を大量に使う人向けの新プランをそろって発表した。
ソフトバンクの場合、5ギガバイト(GB)までで月5千円だったプランに、20GBまでで6千円のプランを追加。1GBあたりでは7割引きになり、ほか2社もほぼ同じ料金だ。各社は契約状況を公表していないが、ソフトバンク幹部は「かなり多くのお客様が乗り換えた」と話す。
動画サイトなどの利用者が増える中、多くの人は料金を抑えるためにデータ通信を我慢しているとみられている。NTTコミュニケーションズが20~40代のスマホ所有者に聞いた調査では、52・7%が「通信量を気にしながらスマホを使ったことがある」と回答。65・4%は、契約で使える通信量を超えてしまった経験があったという。
値下げは、データ通信が多い人に割安感を感じさせて、格安SIMへの乗り換えを防ぐ狙いがある。だが、格安各社もすぐに反応。イオンモバイルは10月から、元々あった20GBプランを4980円から4480円に値下げし、楽天モバイルも割安で大容量のプランについて「検討したい」(広報)という。
格安SIMの契約数は6月末時点で1346万件あり、1年前の33・8%増。大手3社の契約数も微増が続くが、携帯電話などの契約に占める格安SIMの割合は8・2%で、1年前の6・3%から着実に伸びている。(藤崎麻里、上栗崇)