部落差別解消推進法案が16日午前、衆院法務委員会で自民、公明、民進などの賛成多数で可決された。法案は衆院本会議を経て参院に送られ、今国会で可決、成立する見通し。罰則のない理念法で、国や地方公共団体の責務として相談体制の充実や教育・啓発、実態調査を実施するよう明記している。
法案は「現在もなお部落差別が存在する」との認識を示したうえ、「基本的人権の享有を保障する憲法の理念にのっとり、部落差別は許されない。解消することが重要な課題」と規定。「部落差別」の言葉を初めて法案名に盛り込んだ。
部落問題をめぐっては、1969年制定の同和対策事業特別措置法以来、同和地区の地域改善対策事業などに約16兆円が投じられ、住環境などに改善がみられた後、2002年に事業は終了。差別意識解消をめざす人権教育・人権啓発推進法が00年に制定されたが、戦前の調査報告書「全国部落調査」の復刻出版が計画され、インターネット上で地名リストが掲示されたことなどから、部落解放同盟や自由同和会が「差別はなお存在する」として、さらなる立法を求めていた。
部落差別解消推進法案は今年5月、自民、公明、民進の3党が衆院に提出していた。部落問題をめぐる認識で部落解放同盟と対立する共産党や全国地域人権運動総連合は、今回の法案を「部落差別を固定化するものだ」として反対している。(編集委員・北野隆一)