貧困や虐待などで実の親が育てられない子どもを社会で育てる仕組みの一つとして注目される「特別養子縁組」。適切なあっせん(仲介)や当事者へのていねいな支援が求められるが、児童相談所と民間事業者それぞれに課題を抱え、環境整備が急がれる。
生後1週間、子どもを養子に 「とにかくお金がない」
特集:子どもと貧困
民法が改正されて、特別養子縁組が盛り込まれたのは1987年。宮城県の医師が73年、戸籍に出産記録が残るのを恐れる親が人工中絶するのを防ぐため、育てたい夫婦が実親であるように出生届を偽造していたことを自ら公表し、法整備を求めたのが発端だ。
それまでは、実親との法的関係が残る制度(普通養子縁組)しかなかった。特別養子縁組は、実親との法的な親子関係はなくなる。
日本の養子縁組制度はもともと家制度継承の手段という認識が強く、児童福祉の観点が薄かったため、民法が改正されても、専門機関やあっせん法は創設されてこなかった。
貧困や虐待などで保護を必要とする子どもは約4万6千人いるが、現状では約9割が児童養護施設や乳児院などで暮らす。虐待などの増加を受け、国は2011年、こうした子どもがより家庭的な環境で暮らせるよう、選択肢を増やしていく方針を打ち出した。
国は、今年5月に児童福祉法を改正。特別養子縁組と、戸籍上の親子関係を結ばずに一定期間子どもを育てる里親制度を重要な選択肢として明文化した。7月には特別養子縁組の利用促進のための検討会を立ち上げ、支援のあり方や子どもの年齢制限引き上げなどの議論を始めた。
特別養子縁組の件数とともに、相談も増えている。厚生労働省によると、民間事業者への養親希望の相談は13年度で2506件。縁組を希望する実親からの相談は1898件あった。
制度の普及に取り組む日本財団の高橋恵里子さん(45)は「虐待死を防ぐための妊娠相談の広がりとともに、制度が少しずつ知られるようになり、主に不妊治療に取り組む夫婦に関心が高まっている」と分析する。
国は児相に、もっと積極的に取り組んでほしいとして実態調査しているが、地域によって差が大きい。背景に深刻な人手・経験不足がある。
虐待認知件数が最も多い大阪府…