シリア北部アレッポ西部で5日、反体制派によって破壊されたとされる野戦病院の被害を調べるロシア軍兵士=AFP時事
激しい戦闘が続くシリア北部アレッポをめぐり、国連安全保障理事会は5日、人道支援のために7日間の休戦協定を求める決議案を採決したが、ロシアと中国が拒否権を発動し、否決された。シリアの内戦をめぐってロシアが安保理で拒否権を発動したのは6回目で、中国は5回目になる。
アレッポでは、アサド政権とロシア軍による攻撃の影響で、反体制派が支配する東部に食糧や医療品が届かない状態が続いている。決議案は負傷者や病人が避難し、人道支援団体がアクセスすることを目的に、ニュージーランド、エジプト、スペインの3カ国が提案していた。
だが、ロシアのチュルキン国連大使はアレッポ東部から戦闘員が撤退することが決議案に盛り込まれていないことについて「こうした休戦は戦闘員が弾薬を補給するのに使われ、市民の苦しみをよりひどくする」と発言。アレッポをめぐる米ロの交渉が続いていることなども挙げ、賛同できないと述べた。中国の劉結一・国連大使も、交渉のために決議案の採決を延ばすべきだとの立場を取った。
これに対し、英国のライクロフト国連大使は声明で「アレッポで地獄を耐えている、何十万人もの罪のない人たちを人質に取っている」と両国を強く批判。米国も「でっち上げの言い訳だ」とロシアによる拒否権を非難した。(ニューヨーク=中井大助)