児童相談所では、個人情報を守るため、あらゆる書類をシュレッダーにかける
■第3章「親と向き合う」(4)
児童相談所(児相)内で数人が集まって協議していた。
【キーワード】要保護児童対策地域協議会(要対協)
連載「児相の現場から」
「母親は幻覚があるということです」
「幻覚の中身を聞いたか?」
施設にいる3歳の男の子を家庭に復帰させるかどうか。児相や自治体、警察などの関係機関が集まり、虐待事案への対応を話し合う要保護児童対策地域協議会(要対協)の会議を控え、児相としての方針を確認する話し合いだ。
両親は覚醒剤使用の罪で服役し、すでに出所している。母親が幻覚などを訴えたため、受診を勧めたところ、「病院に行って治療するので、子どもをかえしてほしい」と言ってきたという。
次々に質問が飛んだ。父親の仕事は。家賃は。母親はちゃんと病院に行くだろうか――。
「幻覚があるというだけでは親権者の引き取り希望は断れないと思います」と担当のワーカー(児童福祉司)が言った。「ただ、地域の人たちは夫婦に子育てができるのかと心配している。今度のケース会議では保健師だけでなく、精神保健福祉士にも入ってもらって母親が相談できるような態勢にしておきたい」と続けた。
一時保護したり、施設に入所したりしている子どもを親元に戻すという判断は、簡単にはできない。親子の状況、周囲の支援態勢などが鍵になる。子どもが家庭に戻った後のフォローも欠かせない。
保護観察所から受診歴などを確…