ホワイトハウスのスパイサー報道官は2日、イスラエルの占領地での新たな入植活動について、「(和平を)達成する目標の助けにならない可能性がある」とする声明を発表した。トランプ政権はこれまで入植活動の拡大に黙認姿勢だったが、イスラエルに一定の自制を求めた形だ。
声明は「我々は入植地の存在が和平への障害になるとは考えていない」としながら、新たな入植地の建設や境界線を越えた入植拡大は、イスラエルとパレスチナの和平の妨げになるとの考えを指摘。15日にワシントンで予定される米イスラエル首脳会談を前に米国が釘を刺した形だ。
ただ、「トランプ政権はまだ入植活動への公式の立場は決めていない。議論の継続を望んでいる」とも付け加え、会談で直接話し合うという。
トランプ大統領はイスラエル寄りの発言を繰り返し、入植推進派の弁護士を駐イスラエル大使に指名。イスラエルはこうした姿勢をみて、入植活動を加速させている。1月31日には、ヨルダン川西岸の占領地に新たにユダヤ人入植者向けの住宅3千戸を建設する計画を承認した。
オバマ前政権は入植活動を厳しく批判し、国連安全保障理事会でのイスラエルの入植活動の即時停止を求める決議に拒否権を行使せず、異例の棄権をした。トランプ氏はこれに猛反発し、「イスラエルが無礼な扱いを受けることを続けさせるわけにはいかない」などとし、政策転換を示唆していた。
だが、トランプ氏の娘婿で敬虔(けいけん)なユダヤ教徒でもある、ホワイトハウスのクシュナー上級顧問らの意向が十分見えていないなど、新政権の中東政策はなお不透明な状態が続いている。
一方、トランプ氏は2日、訪米中のヨルダンのアブドラ国王と朝食会で短時間会談した。シリアに避難民らの「安全地帯」を設ける構想などを協議したが、新政権の対イスラエル政策について議論があったかは不明だ。(ワシントン=杉山正、エルサレム=渡辺丘)