国に先駆けて「家庭教育支援条例」を制定した熊本県の「親の学び講座」の様子=2016年2月、熊本県大津町、杉原里美撮影
自民党が今国会で提出をめざす「家庭教育支援法案」の全容が明らかになった。国が家庭教育支援の基本方針を定め、地域住民に国や自治体の施策への協力を求めることなどが柱だ。一方、素案段階で「基本理念」にあった「子に国家及び社会の形成者として必要な資質が備わるようにする」の文言を削除。与党内からも、「公」が家庭に介入しかねないことへの懸念があり、考慮したとみられる。
法案は、同一世帯の構成人数が減り、家族が共に過ごす時間が短くなるなどの環境変化で、家庭教育支援が「緊要な課題」だと指摘。基本理念で、家庭教育を「父母その他の保護者の第一義的責任」と位置づけた。「子に生活のために必要な習慣を身に付けさせる」ことや、支援が「子育てに伴う喜びが実感されるように配慮して行われなければならない」ことなどを盛り込んでいる。
文部科学相が支援を総合的に進めるための「基本方針」を定め、これを参考に自治体も基本方針を定めることを求めている。
こうした内容については、昨秋の素案の段階で、与党内や識者から「家庭教育に公が介入するものと受け取られかねない」といった批判が出ていた。このため、今回明らかになった法案では、地域住民が「国又(また)は地方公共団体が実施する家庭教育支援に関する施策に協力するよう努める」との規定についても、素案で地域住民の「責務」としていた文言を「役割」と言い換えた。また素案では、家族を「社会の基礎的な集団」と位置づけていたが、この部分も削除された。識者からは、自民党の憲法改正草案を想起させるとの指摘もあった。
一方で、素案にはあった「家庭教育の自主性を尊重」するとの文言は削除されており、法案が成立した場合、基本方針に「公」と家庭教育の関係がどう具体的に位置づけられるのかが問題になりそうだ。
自民党の中曽根弘文・青少年健全育成推進調査会長は14日、党部会で「核家族化、地域社会の希薄化などの問題が発生し、これほど重要な課題はない。教育基本法にも家庭教育について明示されている。ぜひ承認いただきたい」と述べた。(水沢健一)
■自民党の家庭教育支援法案 こう変わった
【削除】
・家庭教育の自主性を尊重
・社会の基礎的な集団である家族
・国家及び社会の形成者として必要な資質
【追加】
・家庭教育支援の重要性
【文言の変更】
・地域住民等の責務→地域住民等の役割
・学習の機会の提供→学習の機会及び情報の提供
・地域における家庭教育支援の充実→地域における家庭教育支援活動に対する支援