7回、カルロス・カールソン(右)を左ストレートで攻める山中慎介=長島一浩撮影
(2日、WBCバンタム級タイトル戦)
山中慎介が12連続防衛 ボクシングWBCバンタム級
最後の最後まで、己の武器を信じて拳を振り続けた。「倒れても、起き上がってくるのは想定内だった」
7回だ。山中の左ストレートが、相手のガードをこじあけて顔面をとらえる。これでもか、これでもかと打ち込む手を緩めない。この日5回目のダウンを奪うと、レフェリーが試合を止めた。
過去28戦無敗でKO率が6割を超える山中の最も得意とするパンチは、左ストレートだ。2回目の防衛戦から5試合連続KO勝ちしたことで、「相手が左をもらわないよう、研究してくるようになった」と帝拳ジムの浜田剛史代表は言う。ここ5試合のうち3試合は判定までもつれた。
12回目の防衛戦に向けて山中が目指したのは、相手の研究をもはねのける「進化した左」(大和トレーナー)だった。グローブをつけない素手に近い状態でミットを打つ練習を新たに採り入れ、どの角度で打ち込めば、より拳に力が伝わるのかを体に覚え込ませた。
内山高志も、長谷川穂積も届かなかった12連続防衛。具志堅用高さんが1980年に達成して以来、日本ジム所属の男子選手としては37年ぶり2人目の快挙だ。それでも、山中はリング上で淡々と言った。「記録は意識しない。みなさんが期待して、楽しんでもらえれば。結果はついてくる」。盛り上がる周囲をよそに、平常心を貫くことができれば、目前に迫った大記録にも手が届く。(清水寿之)