自衛隊が他国軍と物資などを融通する手続きを取り決める「物品役務相互提供協定(ACSA)」の改定や新規締結が週内にも国会で承認される見通しだ。安全保障関連法の施行を受け、これまでの協定から適用範囲を拡大する内容。野党は批判しているが、政府はさらに締結国を増やしていく方針だ。
日米、日豪ACSA改定と日英ACSAの承認案三つ。13日にも参院外交防衛委員会で与党の賛成多数で可決され、週内に参院本会議で可決される見通し。
日本政府は米豪両国との間で1月までに安保関連法を反映する内容の改定に署名し、英国とも同月、初締結。安倍晋三首相は3月の国会答弁で「平和安全法制によって幅の広がった日米間の安全保障協力の円滑な実施に貢献し、協力の実効性を一層高める」「自衛隊と豪軍や英軍との緊密な協力を促進し我が国の平和と安全の確保に資する」と意義を強調した。
安保関連法を「違憲」として批判する野党側は、ACSAの適用範囲拡大を「あいまいで歯止めがない」「他国軍の武力行使と一体化する」と追及している。6日の参院外交防衛委では、民進の藤田幸久氏が「発進準備中の航空機の給油も新たな日米ACSAが適用されるのか」。共産の井上哲士氏は「米国の戦争にいつでもどこでも切れ目なく兵站(へいたん)活動を行う体制づくりだ。戦争に巻き込まれないか」と指摘した。
だが政府は今回の承認を足がかりに、締結国を広げていく方針だ。首相は「各国との二国間関係や協力の実績、具体的ニーズも踏まえ、必要なACSA締結を推進していく」と明言。フランス、カナダと交渉しているほか、ニュージーランドともACSAに関する研究を検討することで一致。韓国とも「適切なタイミングで締結することが望ましく協議していく」(岸田文雄外相)としている。(下司佳代子、相原亮)
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《物品役務相互提供協定(ACSA)》 自衛隊と他国軍が物資を融通する際の決済手続きを定めた協定。他国軍への弾薬提供や発進準備中の戦闘機への給油は、日本が直接攻撃されるケースのほか、安保関連法に基づき、他国への攻撃で日本の存立が脅かされる明白な危険がある「存立危機事態」▽日本の平和と安全に重要な影響を与える「重要影響事態」▽国際社会の平和を脅かす戦争などに国際社会が対応する「国際平和共同対処事態」――にも適用範囲が広がった。