削蹄師として牧場に就職した東海大の卒業生、一木琢雅(たくま)さん=9日、熊本県大津町、金子淳撮影
昨年4月の熊本地震に見舞われた熊本県南阿蘇村の東海大学農学部を卒業した一木琢雅(いちきたくま)さん(22)は、この春、阿蘇のふもとの町、同県大津町のつだ牧場で、削蹄(さくてい)師として第一歩を踏み出した。牛の爪を切り、手入れをする仕事だ。将来は「阿蘇で牧場を」と夢見ている。
一木さんは川崎市出身。牧場とキャンパス、住む場所が近い阿蘇キャンパスの「最高の環境」にあこがれ東海大に入った。4年生になり、牧草を使わず野草だけで牛を育てて搾乳する実験など、やりたいことがたくさんあった。そんな矢先、地震が起きた。
寮の母屋は倒壊し、大家さんの親を、おんぶして助け出した。一時、南阿蘇を離れたが、5月には戻り、がれきの撤去やゴミの分別などの作業を手伝った。「目の前の助けが必要な人たちのために、できることをしたかった」と振り返る。
大好きな阿蘇が地震で一変してしまった。「元に戻ってほしい。少しでも、恩返しがしたい」。削蹄師としていろんな牧場を見て回り、いずれは阿蘇で牧場を造りたいと考えている。働き始めて10日ほど。牛には慣れているつもりだったが「仕事となると全然違う」。今は、親方や兄弟子の補助をしながら、「早く技術を身につけたい」と奮闘する日々だ。