違法残業が社内で常態化していた疑いがある広告大手、電通の捜査で、厚生労働省は20日、山本敏博社長から任意で事情を聴いた。関係者への取材で分かった。厚労省は中部(名古屋市)、関西(大阪市)、京都(京都市)の3支社に対する捜査を進めており、法人としての電通と、支社の幹部らを労働基準法違反の疑いで近く書類送検する方針だ。
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特集:電通・過労自殺問題
厚労省による一連の捜査は、この書類送検で終結する見通し。今後の焦点は、検察による刑事処分の判断に移る。
厚労省は、2015年末に過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)の上司だった本社(東京)の幹部と、法人としての電通を、昨年12月に労基法違反の疑いで東京地検に書類送検した。中部、関西、京都の各支社でも、社員に違法な長時間労働をさせていた疑いがあるとみて、年明け以降も幹部や関係者から事情を聴くなど、大規模な態勢で捜査を続けてきた。
20日には山本氏にも任意で事情を聴いた。全社的に常態化していた長時間労働の実態などについて、経営トップに直接確認したとみられる。山本氏は昨年末の書類送検を受けて引責辞任した石井直(ただし)社長の後任として、今年1月に社長に就任したばかり。
厚労省は早ければ月内にも、再度の書類送検に踏み切る方針。本社の役員らの書類送検については、慎重に判断しているもようだ。