女子団体追い抜きで世界記録を出して優勝した(左から)高木美帆、佐藤綾乃、高木菜那=細川卓撮影
2分55秒77。
日本が世界新で優勝 スピードスケート女子団体追い抜き
スピードスケートのワールドカップ(W杯)女子団体追い抜きで10日、日本が世界新記録を打ち立てた。
先頭を交代しながら、3人が一列に並んで滑るこの種目は、選手が受ける空気抵抗をいかに減らし、ラストスパートまで足のスタミナを残せるかが勝負になる。個の力に勝るソチ五輪金メダルのオランダ勢を抑えての世界記録更新は、作戦の妙と高木菜那、美帆姉妹、佐藤綾乃の一体感から生まれた。
日本はエース高木美の力をどう使い切り、スピードを維持するかがポイントだった。ナショナルチーム(NT)のデビットコーチの答えが序盤で長く滑らせ、さらにチームの先頭交代の回数を4から3に減らすことだった。
高木美が昨季の1・25周から0・5周長く引っ張ったことで「最初から速いペースがつくられた」と佐藤は言う。先頭交代は滑りのリズムが変わり足の負担が大きいが、回数を減らして最小限にとどめた。余計なタイムロスもなくなった。
ただ、1人が長く速いペースを維持することで疲労はより蓄積されやすくなる。そこは3人でカバー。滑りのタイミングを合わせ2、3番手の選手は前方選手との間隔を、空気抵抗が半減する1メートルほどに保った。姉の高木菜は「NTでみんなで練習してきたことが生きた」。日本が刻み続けた1周27、28秒台のラップは、個々が別々の企業チームで競い合うオランダにはない強さの証明だった。(榊原一生)