試合会場で調整する張本。得意のバックハンドの調子も良い
卓球世界選手権で日本史上最年少代表の13歳、世界ランキング69位の張本智和(エリートアカデミー)が日本のエース相手に、大番狂わせを狙う。31日のシングルス初戦に勝てば、6月1日の2回戦でリオデジャネイロ五輪個人銅、団体銀の世界ランク6位、水谷隼(木下グループ)との対戦が濃厚だ。得点時にエビぞりになって叫ぶ「張本スタイル」を爆発させ、2020年東京五輪に向けて大きな一歩を踏み出せるか。
両親が中国の元選手で、父は元世界女王小山ちれの練習相手を務め、母は世界選手権代表だった。仙台市で育ち、14年に日本国籍を取得。18歳以下の選手で競う昨年末の世界ジュニア選手権で、団体と男子シングルスの2冠。大会史上最年少優勝記録を作った。
球の回転を見極めてラケットを合わす能力は天性のものがあり、バックハンドはシニアでも十分に通用する。身長は170センチを超え、足のサイズも27・5センチ。体格もまだまだ大きくなりそう。日本代表の倉嶋洋介監督は「いずれ世界王者になれる逸材」と言う。
今年1月に代表に選ばれた後は、周囲の期待が重荷になり、国内外の大会で思うように勝てなくなった。4月中旬の国際大会の後は「どれだけ練習すれば勝てるのか」と一人で悩んだ。
だが、両親や倉嶋監督に励まされた。「自分でも冷静に考えたら、まだ13歳なんだなと。焦らずに自分のできることをしたいなと思った」。気持ちを切り替えると、過去に勝ったことがない選手に練習試合で勝つなど、自信を取り戻した。
「憧れの選手の一人」という水谷との対戦が実現すれば、公式戦では初めて。数年前にテレビ番組で共演した際、「サーブの種類を増やした方がいい」とアドバイスされたうえ、反時計回りの鋭い横回転をかける「逆回転サーブ」を直接教わったことが飛躍につながった。「得意のバックで頑張って崩して、フォアでも思い切り攻めるプレーができたら……。1%はチャンスがあるかもしれない」。恩返しのイメージトレーニングは十分だ。(前田大輔)