衆院憲法審査会は8日、天皇陛下による昨年8月の「お気持ち」の表明後初めて、「天皇」をテーマに自由討議を行った。天皇陛下の退位を実現する特例法案の成立を9日に控え、今後の検討課題となる皇族減少対策や皇位継承のあり方、天皇の公的行為の位置づけを中心に議論した。
与野党は今年1月から退位についての協議を開始。3月に衆参両院の正副議長が国会の意見を取りまとめた。民進党は協議の間も、審査会で「天皇」をテーマにするよう求めていたが、与党が難色を示していた。自民党内でさえ天皇観は幅広く、退位と憲法上の位置づけが絡む事態になれば、安倍政権が思い描く改憲スケジュールが狂いかねないとの懸念があったからだが、法案の成立が確実となったことから、お気持ち表明後9回目の実質的な議論となる今回、初めて取り上げた。
民進党は、女性宮家の創設に加えて、女性・女系天皇の検討を「速やかに開始すべきだ」(山尾志桜里氏)と主張した。一方、自民からは女性宮家に対し、「天皇の定義さえも変わりかねない」(鬼木誠氏)と否定的な意見が続いた。ただ、両党の議員から党の枠を超えた異論も出た。
一方、自民は憲法を改正して、天皇の公的行為を明記したり、元首として位置づけたりすることにも言及。公明党を含め各党から反対論が相次いだ。
一方、安倍晋三首相が5月3日に打ち出した改憲提案を受けた動きも出始めた。審査会の複数の自民委員が「9条も正々堂々議論すべきだ」(中谷元氏)と主張。上川陽子氏も昨年から今年にかけての議論を総括する文書をまとめるよう審査会長らに要請した。改憲項目の絞り込みに向け、流れをつくる狙いがある。(藤原慎一)