東京・池袋で2015年、てんかんの発作を起こし5人を死傷させた事故で自動車運転死傷処罰法違反(危険運転致死傷)の罪に問われた医師金子庄一郎被告(55)に対し、東京地裁は27日、懲役5年(求刑懲役8年)の判決を言い渡した。家令和典裁判長は「医師として知識がありながら発作の危険性を軽視して運転しており、厳しい非難は免れない」と述べた。
車暴走、医師に懲役8年求刑 池袋の5人死傷
判決によると、金子被告は15年8月、てんかんの発作の影響で意識障害に陥ったまま車を急発進させ、池袋駅前の路上にいた歩行者5人をはね、女性(当時41)を死亡させ、4人にけがをさせた。
裁判では、被告が運転を始めた時、発作で正常な運転ができなくなる可能性を認識していたかが争点だった。被告側は、「適切に抗てんかん薬を服用し、運転中に意識障害が起きるとは認識していなかった」として、危険運転致死傷について無罪を主張したが、判決は、「被告は事故前の2年間に2度、発作を起こし、運転直前には前兆となる異臭感を自覚していた」と指摘。被告は精神科医として抗てんかん薬を処方した経験もあり、「可能性を認識していた」と認定した。
家令裁判長は今年2月、検察側に量刑の軽い過失運転致死傷の罪にも問うよう勧告。予備的訴因として追加させていたが、判決では危険運転致死傷罪の成立を認めた。事故で亡くなった女性の父親は判決後、「判決の内容に関わらず、娘が亡くなったことに変わりはありません。娘には人生を考える時間はもうありませんが、被告にはまだ多くの時間があります。真剣に考え、猛省することを心から願います」とコメントした。(志村英司、千葉雄高)