長崎県対馬市で2016年12月、父娘が殺害され住宅が放火された事件で、殺人と放火の罪に問われた同市の元鉄工所経営、須川泰伸(ひろのぶ)被告(39)の裁判員裁判の判決が27日、長崎地裁であった。小松本卓裁判長は無期懲役(求刑死刑)を言い渡した。
起訴状などによると、被告は16年12月6~7日、同市の漁業、古川敬氏さん(当時65)の頭部を鈍器で殴り殺害。敬氏さん宅で次女の聖子さん(同32)を同様に殺害したとされる。また、敬氏さん宅にガソリンや灯油をまいて火をつけ、全焼させたとされる。
公判では、凶器や犯行の目撃者など犯行を直接立証できる証拠がない中で、検察側は間接証拠を積み重ねて被告の犯人性を主張。被告側は一貫して事件への関与を否定し、無罪を訴えてきた。
検察側は今月12日の論告で、敬氏さんから請け負った漁船のエンジン交換作業が進んでおらず、発覚するとトラブルになるという動機が被告にはあったと指摘した。火災現場にあったガソリン携行缶に被告の掌紋が残っていたことや、被告宅で押収されたサンダルの足跡痕や被告のDNAが聖子さんの車から検出されたことなどから、「被告が犯人であることは間違いない」と主張。「犯行態様は極めて悪質で結果も重大」として死刑を求刑した。
一方、弁護側は最終弁論で「検察官が立証しようとする間接事実は被告の犯人性の証明力に乏しい」「間接事実をいくら積み上げても犯人性の立証には足らない」などと主張。被告は「私は2人を殺害して火を放つようなことは絶対にやっていません。信じていただきたい」と述べ、改めて無罪を主張していた。